ジプシーブラッド / ろっこうおろし (1972)

ろっこうおろし

日本のロックっていうと結局、はっぴいえんどとかはちみつぱいって話になっちゃうわけですが(あくまでも私の場合)、それらはちょっと志が高過ぎるっつうか、もったいぶってるとこあるじゃないすか。もっとこう、ガツンとシンプルにロックせんかい!みたいな気分になるときもありまして。まあ、たまにザ・バンド聴いててもじれったくなることがあって、そういうときはグリースバンドとかがしっくりきたりします。

そいういう意味でここんとこしっくりきてるのが葡萄畑のファーストと、このジブシーブラッドの唯一の(?)アルバム。いい意味でB級っぽいというか。演奏の上手い下手じゃなくて(むしろ、はっぴいえんどはちみつぱいより上手いに違いない)、単純にバンドっぽいノリがストレートに伝わってきます。レコードの演奏から、せーので一発録りしてる風景が浮かぶし(実際はどうだか知りません)、そのままライブのイメージに直結するといいますか。

ジプシーブラッドは、メンバーとか詳しいこと知らないけど、基本的にギターのバンドぽい。ドラム、ベースがずっしりくっきりと気持ちイイいなたさで(←相当イイ!)、その上で複数のギターが絡んでるのが基本形でしょうか。ギタリスト3人いるんだけど、アコギ、マンドリンも含め一曲の中での役割分担みたいのがすごいうまくて素晴らしい。

アルバム冒頭、エレキとアコギが心地良く絡む渋ファンキーなリフにワクワクしつつ、「わすれ〜かけた〜ことば〜」という歌い出しのダサさに唸らされるんだが、これは『ゆでめん』における「おしょーがつといえーばー」のカッコワルさに受けた衝撃を思い起こさせる。

音楽性はもちろんアメリカンルーツ寄りで、全般的にカントリーフォーク系のロックなんだが、その中において「紫色の煙を吸おう」なんてフレーズが出てきたりして、未整理なとこが面白い。

マイベストトラックは「風」という曲です。「土手の向こうに」と続けて聴きたい名曲。しみる。「土手」とくらべると随分ミニマルな編成でシンプルに聴かせるんだが、終盤に一小節だけ登場するホーンセクションが超効果的であり、謎でもある。だってそれは、サージェントペパーズでちょこっとだけブラスバンドが登場するといったような類のリッチなお遊びとは根本的に違うし。私がアレンジャーだったら終盤そのままホーン敷き詰めてもうちょっと盛り上げちゃうけどね。たぶん間違えて消しちゃったんだろうと私は勝手に思っている。