Danny Kortchmar / Kootch (1973)

Kootch

『火の玉ボーイ』のCDライナーノーツに、「スカンピン」はダニーコーチマーのソロ『クーチ』の影響大、というようなことが鈴木慶一本人によって書かれていた。ちょっと意外、というか、んん?どのへんが?という感じで、頭の中で思い浮かべてみて両者に共通するイメージはエレキシタールみたいな音色くらい。で、実際に聴き返してみてもいまいちよくわからなかった。結局、エレキシタールくらい(笑)

しかしまあ、そんなもんですよ、影響受けるってのは。何かに思いっきり触発されて作ってるんだけど、結果的にそれほど音には現れないということは多々ある。もしかしたらどっかのコード進行とかを拝借してるのかもしれないけど、そういうのはね、意外と気付かないもんですよ聴いてるほうとしては。むしろ、リアルタイムでこんなん聴いてたなんてやっぱりさっすが〜といったところである。

僕がダニークーチ(あえてこう呼ばせていただく、本人はイヤがるらしいが)の音楽に最初に接したのは、フリーソウルのコンピ(なんかこっ恥ずかしいぞ)で、本作の「For Sentimental Reasons」やジョーママの「Love'll Get You High」が収録されていた。それらの曲は、アーチーベル&ドレルズの「Tighten Up」なんかと並んでいてもまったく違和感なく聴けていたし、何者かも知らないし、また知ろうとも思わなかった。ようするにレアグルーヴ(死語?)的な気分の延長で聴いていたはずである。

そして数年後、今度は、ルーツロック〜SSW〜名盤探検隊的気分で再会するのである。その頃には名前なんて当然覚えてないので、あれれ?この曲聴いたことあるぞう、ということになる。

ダニークーチ(と、ピーターゴールウェイ)は、こっちが、ファンク、ソウル、カントリー、スワンプ、SSWなど、いかなるモードにあっても常にちらちらと顔を出してくる奇人なのだ。ジョーママのファーストとオハイオノックスは名盤探検隊のホームランである。

このソロ作『Kootch』は、ジョーママの2作に比べると非常にユルい。クーチは言うまでもなく変態的テクを伴うギタリストであるが、特に目立つギタープレイは無い。つうか、ギターソロ自体がほとんど無い。リズムプレイに徹しているのだが、じゃあリズムが切れまくりかというと、これがけっこうユルい。なぜならドラムとベースも自分でやってしまったからである。特にドラムのドテステ感はいい味出していて、時折きこえるリズムボックスまでがレイドバックしているかのようだ。大滝詠一がファーストソロで同じようなことをやってるが、ソロなんだから好きなことさせろよ的な我がまま録音、ならびに、ドラマーじゃないんだけどリズムセンス鋭い人のつたないドラム、というのが僕は大好きだ。

そもそも「想定した聴き手は僕自身」というのも好感度絶大だが、聴きたかったのは自分のテクニカルなギターソロなんかではなくて、モロ手作り風味に紡がれたユルいノリの趣味趣味音楽だったということですね。素晴らしい。

最後に蛇足ではあるが、本作収録の「Burnt Child」はPSRの「sugar」におけるサンプリング大ネタ使いで有名である。