Grateful Dead / American Beauty (1970)

American Beauty

もう随分長いこと、ゆる〜い愛聴盤として重宝している。高揚とか創作意欲といったものはまったくもたらされず、むしろその逆、無気力・自堕落・ダメ人間増長作用がある。何もしたくない自分に対してまだ多少なりとも残っていた焦燥感すら取り除き、いいじゃん何もしなければ、と思わせてくれる音。

音的には、カントリー/フォーク系のルーツロックということで、そんなもん他にもいくらでもあるじゃんと思うのだが、ここでの絶妙なヤサグレ/クタビレをともなった枯れた味わいは他ではちょっと得難いものである。

どこか頼りなさげなヨレヨレ感、線の細さは、アメリカン・ルーツ好きなイギリスの連中に近い感覚もあるのだが、ちょっと違う。デッドといえばまずサイケのアイコンみたいな存在だと思うのだが、もともとカントリーなどのルーツ系の素養があるわけで、意図的にそれらを志向してがんばってるイギリス勢とは根本的に違うんでしょう、きっと。本作における、いなたさ満点のコーラスワークにしても、なんとなくやってみたらこうなった、とのことだから、ますますそういうことなんだろう。

もちろん、当時のトレンドがサイケからルーツに移行していたということも無関係じゃないと思うが、それ以前に、なんかもう疲れちゃったねえ、もっと楽しようよ、という疲弊感が先行して作られた音源なのだ。勝手な想像だが。この、アルバムに一貫したフワフワと漂うような浮遊感/脱力感は、サイケバンドがやるルーツロックならでは、といったところでしょうか。

とにかくこれは、クタクタになって帰宅し荷物を放り投げ、上着やら靴下やらをそこらへんに脱ぎ捨て倒れ込み、早くシャワー浴びたいんだけどでもめんどくせえ、そうだよ明日は土曜日、ほんの束の間の自由だ、何も急いで何かをすることはない、という感覚をそのまま音にしたような作品だ。

せつなげ爽やかな哀感がたまらないフォークロック「Box Of Rain」、だらしなファンキーなカントリーロック「Operator」、Gラブのようにぐちゃ〜としたリフではじまり人のやる気を根こそぎもぎ取るような「Candy Man」、ラストくらい威勢よくキメようと意気込むもやっぱりまったりしてしまうカントリーブルース「Truckin'」など、聴きどころは多い。

が、私のベストトラックはなんといっても「Friend Of The Devil」。少なくともここ5年以上、人生のテーマソングとさせてもらっている。しみる。2本のアコギとマンドリン、まったりファンキーなカントリーのツービートが絡みまくりめちゃくちゃ心地よく、なによりヨレヨレ/ナヨナヨ/クタビレ/ヤサグレのバランスが最高なガルシア(だよね?)のボーカルがしみまくり。私のiTune上での再生回数でもこの1年の堂々2位に輝く。

以前「Friend Of The Devil」を思いっきり意識して、「雲の切れ間」という曲を作ったことがあるんだけどさっき聴いたらぜんぜんダメだね。「Friend Of The Devil」の十万分の一もしみない。まだまだだな。