Prince & The Revolution / Live (1985)

Prince & The Revolution Live

僕がはじめてプリンスのライブ映像に接したのは「I Would Die 4 U」のプロモクリップだったと思う。レコードとまったく違うアレンジで、歌に入るまでやたらとひっぱったり、シーラEに短いパーカッションソロを何度も繰り返させたり、合図ひとつでバンドを完全にコントロールするさまが、中学1年生のお子ちゃまからしたらまったく理解不能な衝撃だった。

続く「Take Me With U」のクリップも同様で、軽く2コーラス歌ったあと、あるべき展開パートをやらずに、レコードにはまったく無い展開に乗せてギターソロをバリバリ弾きはじめ、尚且つ、バンドにビシバシ指示も出し続ける姿は、ああ、この人はきっとビルボードトップ40に出てくる他の人達とは違うのだ、と思わせるに充分だった。

で、極めつけは85年グラミー授賞式での「Baby I'm A Star」ですよ。まず選曲からしておかしいわけ。たぶんトリだったと思うんだけど、前に出て来た人達は当然、前年にもっともヒットした曲をレコード通りの無難なアレンジで披露するわけですが、プリンスは『Purple Rain』から4曲のトップ10ヒットを持ちながらそれらを無視して、シングルカットすらしていない「Baby I'm A Star」ですから。

アレンジはもう、当然という感じでレコードとはまったく違うもので、ジャムセッションパーティーみたいなものだった。僕にとってはグッゴー初体験ですよ。あと、指2本の合図で2ヒットとか。5ヒットを合図にバンドはエンディングフレーズに入り、まだ演奏が続く中ボディガードを引き連れVIP客の間をかきわけて退場していくのをポカーンと見てましたね。カッコイイとかいうよりは、なんだこりゃ?という感じでした。『Purple Rain』のレコードですでに相当なファンにはなっていたけど、これを見た時から盲目的な信者になったんだと思う。

『Prince & The Revolution Live』は84〜85年に行われたパープルレイン・ツアーの終盤、85年3月30日のコンサートをノーカット収録したもの。上記の3曲も収録されている(もちろん日は違うが)。MTVで衛星中継されたものがそのまま、ということもあってか、ミックスがかなり雑だったり終盤プリンスの声がつぶれちゃってたりと、よくビデオ化OKしたなあという部分も多々あるが、それでも貴重な記録であることに変わりはない。

本作の見所をあえて挙げるなら、もろファンク寄りな2曲のメドレー「Irresistable Bitch 〜 Possessed」で、JBが乗り移ったかのような失禁ものの演奏を楽しめる。実際、プリンスは「Possessed」をジェイムスブラウンに捧げる、とクレジットしている。

ザ・レヴォリューションは、レコードにバンド名がクレジットされたのは84〜86年の3作品だけだが、基本的には78年のデビュー以来のバックバンド。その後のバンドに比べると、技術的にはたぶん一番下なんだろうけど、僕は一番好きだ。白人のドラマーを欲しがったとか男女混成にこだわった、というあたりはファミリーストーンを意識してのことだと思うが、ことライブにおいては(レコーディングはどうせほとんど自分でやっちゃうから)プリンスの「ロックでもファンクでもないヘンテコな音楽」の形成に、レヴォリューションが相当寄与していると思う。

それにしても、このライブをやった時には次なる大問題作『Around The World In A Day』がとっくに完成していたのだ(ほんのひと月後には発売したんだから!)という事実が、いまだにどうしても飲み込めないでいる。