The Band / The Band (1969)

The Band

じいさんのロックです。このアルバムを作った当時、メンバーの平均年齢はせいぜい20代半ば過ぎくらいでしょ?まだほんの小僧じゃないですか。信じられませんね。「Rockin' Chair」なんて、60歳超えてまだ音楽やってたとしたらその時はこんな曲作れたら渋いなあ、ていう曲だと思うんですよ。

ザ・バンドとしてレコードデビューする以前、すなわちホークス時代の音源とか聴くとけっこうやんちゃな音出してるんですよね。おう、生きがいいね、リズム&ブルースだね、って感じの。それが、ビッグピンクでデビューした時にはすでにじいさんになっているという。きっとウッドストックで世捨て人みたいな生活してる間に解脱したんでしょうね。デビューアルバムの一曲目が「Tears Of Rage」っていうのも凄いよね、ビートルズで例えるなら、プリーズプリーズミーの一曲目が「Across The Universe」みたいな感覚ですよ。

とにかくですね、「The Night They Drove Old Dixie Down」とか「The Unfaithful Servant」みたいな曲を聴いちゃうとですね、他の音楽もろもろが、なんかえらい薄っぺらで陳腐なものに思えちゃって困るんですよ。どうにかしてくれませんか?

単に下積みが長いってことじゃなくて、ずっと人のバックやってたから、バンドの在り方がリズムセクション的で、ある意味ミーターズと近い独特の存在感ですよね。常に歌が主役だ、という確固たる信念みたいなものがあって、出しゃばるやつがいない。しかも、いかにもパッパラパーのロカビリー男ロニーホーキンスのバックをずっとやって、ギャラ払わないクラブに放火したり、スーパーマーケットでソーセージ万引きしたり、片腕のゴーゴーダンサーの前で演奏したり、その後、いきなりディランのバックやってブーイング浴びまくったりとか、そういうのを当事者でありながら一歩引いたところでずっと見ていると、いざ自分らが前に出るって時には、スターになりたいなんて微塵も思わないんでしょう。

「だって、やつはギターのジャカジャカ屋だぜ」。天下のボブディラン先生から依頼をうけて、なかなか言えるセリフじゃありません。

古き良き時代のアメリカ南部の風景が見える、とか言われても、おれそんなもん知らないし、でも、聴いてるとなんか見えそうになりますね、不覚にも。このアルバムの良さがわかるのに、5年ほどかかりましたが、実は今でも本当の良さはわかってないんじゃないかという気もします。

そうそう、このアルバムが大好きで『メイキング・オブ・ザ・バンド』をまだ見ていない人がもしいたら、絶対見たほうがいいと思いますよ。悪いこと言わないんで。今日も見ちゃいました。ウルウル。