Lenny Kravitz / Let Love Rule (1989)

Let Love Rule

ジャケに占める顔の割合としてはおそらく、キングカーティスのフィルモアライブとかジャッキーロマックスのスリーなどとならび、史上トップクラスじゃなかろうか。

レニクラは、好きなミュージシャントップ10には余裕で入らないし、無人島レコードにもおそらく入らない。しかし僕にとって常に特別な存在であり続けている。なんというか、僕の作曲の先生みたいな人だからだ。いや、面識はありませんよ。でも、曲作りにおいては、ある意味最大級の影響を受けているかもしれない。

というのも、このレニクラのファーストは僕の「耳コピ」の教典なんであり、生まれてはじめて耳コピったのはアルバム冒頭を飾る「Sittin' On Top Of The World」なんであります。あ、おれってひょっとしたらギター弾けるじゃん、と思ったのはこの時がはじめてっす。続けてタイトル曲「Let Love Rule」や「Mr. Cab Driver」もすんなりマスター(異常に簡単なんだけど)、さらには「Rosemary」を耳コピしたところで、さらばバンドスコア、さらばタブ譜、である。

ついでに、ベースについては「Fear」っていうメチャクチャ好みのファンクロッックがあって、この隙間だらけのイカしたベースラインを一生懸命練習したなあ。

そんなわけで、このアルバムを浴びるように聴きつつ楽器を覚えていったり、曲を作り始めたもんで、知らず知らずレニクラっぽくなることが多々あります。今でもある。一応ジミヘンのつもりだったり、ボブマーリーのつもりだったり、カーティスメイフィールドのつもりだったり、ジョンレノンのつもりだったりして作りはじめても途中で、あれ、レニクラだなあって。それか、自分では完全にジミヘンぽく完成させたつもりが、人からはレニクラだねって言われたり。要は、好きな音楽が一緒なんですよね。

もうひとつ、決定的に、おれとレニクラはどこか見えないところでつながっているのだ!、と確信したことがあって、4枚目の『Circus』ってアルバムに、その時おれが作りかけていた曲が収録されていたの、しかも2曲ね。コード進行が同じとかそういう問題じゃなくて、メロディの細かいニュアンスとかアレンジのイメージとかがまったく同じだったの、わかる?まあ、いいや。

レニクラは基本的に、セルフプロデュース/ワンマンレコーディングの人で、そこにもシンパシー。でもスティービーワンダーとかトッドラングレンとかプリンスといった「全部自分でやりたいんだもん道」の偉大な先人達とはちょっと違うんだよね。そこまで人間離れした病的な才能みたいなものはあまり感じない。失礼かもしれないが、ちょっとがんばれば手が届きそうな感覚があるのだ。

プリンスのライブビデオ『Rave Un2 The Year 2000』にレニクラがゲスト出演していて、ラリーグラハムと殿下に挟まれて若干萎縮気味の姿に思わず、がんばって!と声をあげてしまうのであります。

結局、レニクラはこのファーストが一番好きです。以降のアルバムにも良い曲はたくさんあるけど、アルバム全体としての気合いみたいなものが違います。全楽器、全パートの細部にまで、もの凄い愛情を感じます。

そうそう、先日ライブの打ち上げで「好きなドラマーは誰か」というようなことを訊かれて咄嗟に思いつかず「えーと、レヴォンヘルム」とか答えておきましたが、レニクラのドラム大好きです。