Bob Marley & The Wailers / Catch a Fire (1973)

The Wailers / Catch a Fire

もう、本当にとてつもないレコード。ボブ・マーリーの作品はどれもこれも素晴らしいが、特にアイランドでの最初の3枚は格別。
それらはレゲエの代名詞的な存在でありながら、同時にレゲエとしては相当特異なものであるようにも感じる。僕などはもうほとんどロックとして聴いているし、且つ、強烈にソウルでもファンクでもある。もうボブ・マーリーだけ聴いてりゃいいじゃんていう気分になるほどだ。
アイランドからのデビュー作である『Catch a Fire』は、そんな中でも特にロック臭がムンムンの一撃。そこには当然、ロックのマーケットで当ててやろうというレーベル側の思惑が介入しているわけだが、そのことが結果的に最高の成果をもたらしている。クリス・ブラックウェルという人は、プロデューサーとして偉大だと思う。素晴らしい。
メイキングシリーズもののDVD『メイキング・オブ・キャッチ・ア・ファイア』はかなり面白い。
まずウェイラーズに制作費を渡して自由に録音させ、そのベーシックトラックにブラックウェルが手を加えていくという二段階方式の制作方法が興味深い。
オーバーダブに参加したギタリストのウェイン・パーキンス(ロン・ウッドのわかりにストーンズに居たかもしれない男!)は、何度聴いても未知なるレゲエのリズムが把握出来ず、ブラックウェルに「リズムを聴くな」と言われベースラインをミュートした状態でギターを弾いた、という内容の証言をしている。マッスルショールズのセッションギタリストとしてリズム&ブルースを熟知しているパーキンスがお手上げ状態で訳も判らずプレイした結果、最高の化学反応が起きちゃいましたという、これぞロックのマジック!そう思わずにいられない大好きなエピソード。「Rock It Baby」での印象的なスライドギター(ブルースというよりカントリーフレイバーを強く感じる)はそのようにして生まれたのです。
本作のロックっぽさを象徴しているのが、冒頭の「Concrete Jungle」。このヘビーな1曲を聴くと、夏にレゲエなんて勘弁してくださいという感じだ。ここでのパーキンスののたうち回るようなリードギターは最高、ロック史上もっともグレイトなギターソロ確定。
「Concrete Jungle」と並んで最もオーバーダブにトラック数を費やしたという「Stir It Up」、この曲についてブラックウェルはあろうことか「今聴くと手を加える前のほうが良く思えるね」と告白してしまう。そのシーンを見た時、ギュッと抱きしめてあげたくなった。たしかにオーバーダブ前の「Stir It Up」(デラックスエディションのCDで聴ける)はシンプルで美しく、僕自身今はそっちのほうが好きかもしれない。しかしそれは『Catch a Fire』を聴き倒したあとに出会った元テイクだからこその感動であり、ブラックウェルの行ったことは絶対に間違っていなかったと断言したい。
なんだか、ボブ・マーリーよりもクリス・ブラックウェル賞賛みたいな文章になってしまったが、とにかく!ボブ・マーリーを聴かないロックファンもソウルファンもおれは信用しない。